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実家という言葉の定義を考える時に、皆さんはどのようにイメージされるでしょうか。
辞書を調べると「自分が生まれ育った家」という意味で書かれています。
しかし親が持ち家ではなく賃貸の場合は「親が住んでいる家」という意味に変わる方もいらっしゃいます。
この実家という概念が老後の選択肢を狭めるということについてご説明いたします。
■子育てのための家は老後を過ごす家として最適ではない
「自分が生まれ育った家」としての実家は、親世代が老後を過ごす住空間としては最適とは言えません。
皆さんのご実家を思い浮かべてください。
皆さんが子供時代に与えられていた子供部屋は、今はどのように利用されているのでしょうか。
物置部屋になっていて、年末年始などで皆さんが帰省する際の寝室として使われているのではないでしょうか。
中には子供が過ごしていたままの状態で残されている家もあるみたいです。
子供部屋を目的として小分けにされた空間は、子供が独立してしまうと、利用目的を失います。
中には老後の趣味を楽しむためのスペースとして活用されるケースもあるみたいですが、子供部屋として使っていた空間がなくても生活に支障がないため、放置されるケースが多いようです。
空間として贅沢(無駄)であることはわかっていても、「仕方がない」というのが実情ではないでしょうか。
■実家という概念が利活用を阻む
親世代の立場で考えると、子供部屋として利用していた空間が空いたからと言って、これまで特に困っていなかったので、無理やり理由付けでもしなければ、子供部屋のスペースを活用するとまでは行きません。
空間の無駄よりも、子供達が帰省する際のスペースを確保しておかなければならないというのがほとんどの方のお考えだと思います。
お金の面(不動産の利用価値)で考えると、年に数回しか帰ってこない子供のために場所を確保しなければならないというのは無駄と言えます。
しかし、親世代の心情としては、子供達と過ごした想い出もありますし、子供達が帰ってくる場所を残してあげたいとい気持ちも強いと思います。
この心情としての実家の概念が、子育てが終わった家を資産として活用するという可能性を阻んでしまいます。
子供世代からすると実家の存在は当初は楽なのですが、いずれ重荷に変わってしまいます。
帰省の際にホテルなど宿を手配しなくても良いのはもの凄く楽です。
それこそ親世代が実家が無くなると子供が帰省してくれなくなるのではと勘違いしてしまうほどのメリットです。
しかし親が歳を取るということは実家も歳を取るということで、後になってから様々な問題が生じることになります。
■子供が独立したら検討するべき選択肢
子供が独立したタイミングで実家の今後の選択肢は「住み続ける」「売る」「貸す」の3つです。
子供が独立した頃はほとんどの方はまだ住宅ローンを完済していない状況で、すぐに処分は考えられず、住み続ける方がほとんどです。
ですが、この時にやっておかなければならないことがあります。
それは今後住み続けるためにメンテナンス費用がどれくらいかかるのかを把握することです。
35歳の時に新築で購入し、60歳の時に子供が独立したと仮定します。
この時家は築25年。
多少の不具合はあるかもしれませんが、まだまだ生活に不都合なく利用できている時期かと思います。
日本人の平均寿命は80歳を超えているので、仮に80まで生きるとしても、住み続ける場合はあと20年過ごさなくてはなりません。
築年数にすると45年。
築25年であれば問題はないかもしれませんが、流石に45年ともなると様々な不具合が生じるでしょう。(特に戸建ての場合)
これまでは悪くなってから取り替えるが成立していましたが、歳を取るとそうもいかなくなります。
後期高齢期に差し掛かると体の問題で気軽にリフォームできなくなってしまいます。
従って、住み続けたい方は、体が元気で、資力もある時に、今後を見据えてメンテナンスの計画を立てる必要があります。
住み続けるという選択肢はお金がかかる選択になります。
そこでようやく視野に入るのが住み替えるという選択です。
20年間のメンテナンス費用を考えると、無理して住み続けるよりは、自分たちが快適に過ごせる住空間へダウンサイズすることも現実味を帯びてきます。
「売る」にしても「貸す」にしても、年齢を重ねれば重ねるほど困難になりますので、子供が独立したくらいのタイミングが丁度よい時期と言えます。
■実家が戸建ての場合は特に注意が必要
マンションと違って戸建ては古くなると雨漏れなどの劣化が顕在化してきます。
悪くなったところから順番にちょこちょこと何度もリフォームしてしまうのは家のメンテナンスとしては失敗例です。
リフォームはまとめて行う方が合理的だからです。
最低限のメンテナンスを行っていたとしても、2階建て・3階建ての戸建ての場合、歳を重ねると次第に階段を上り下りすることが難しくなっていきます。
予算があればバリアフリーリフォームで緩和することもできますが、それでも限界があります。
先ほど親と離れて暮らす子供世代にとって実家が重荷になるのはまさにこのことで、実家での生活に支障をきたす段階まで無計画で引っ張ってしまうと、その頃には選択肢がほとんど残されていない状況に陥ります。
歳を重ねるにつれ親の判断能力も低下していくので、資産としての活用という理屈よりも、感情が優先されてしまいがちです。
親が高齢者施設への入居を余儀なくされると更に事態が悪化します。
施設の入居のための費用が予め用意されていたのであれば良いのですが、特に積み立てがない状況だと、子供世代は非常に困った状況に追い込まれます。
ここで実家を売却し費用に充てることができればまだましな選択ができるのですが、子供世代にとって実家を処分するというのは非常に重たい選択となります。
心情的には親が帰る場所を奪ってしまうと考えてしまうからです。
結果的に相続が発生するまで空き家で放置されてしまうのが、今の日本における実家という概念の行きつく先です。
■子育てが終わった家は老後資産として活用する選択肢を持つ
少し前に話題になった老後資金2000万円問題が、物価上昇で老後資金4000万円問題にバージョンアップしています。
年金だけでは生活が苦しくなるので、老後に備えて計画的に資産を積み立てないといけないなぁとお考えの方も多いと思います。
老後資金のためにあくせくしているのに肝心の住宅資産は手つかずというのは矛盾していますね。
老後の資金問題が顕在化すればするほど、それまで住宅ローンを返済してきた持ち家は老後を快適に過ごすための強力なカードとなります。
子育てが終わった家は高齢期の適切なタイミングで資金化し、老後資金として活用するのが現実的な選択です。
お金の面で言うと、高齢期に子育てのための家に住み続けるのは贅沢の極みです。
人生が上手くいって必要な資金が積み立てられたらそういう選択もありでしょう。
ただ、これから住宅購入をするというタイミングで、ご自身の老後について検討するのは現実的ではありません。
そこで、これから家を買う方が注意すべきことは一つだけです。
子育てが終わるころに売却できる立地を選ぶということです。
日本は人口減家余り社会です。
今の住宅購入で甘い判断を行うと、将来の自分やご家族が苦労します。
それだけ老後資金を考えるうえで、子育てが終わった家を資産として活用できる選択肢が重要となります。
これから家を買うのに売る時のことを考えるなんて…と思われるかもしれませんが、住宅購入時に自分の都合を優先し過ぎると立地の面で甘い判断になりがちです。
令和時代の住宅購入は「いつでも売れる」が前提です。
自分にとって100点満点ではなく、自分にとって60点、他人にとっても60点が良い塩梅です。
ちなみに、親世代がまだまだ元気な方も多いと思います。
親世代の老後資金のために実家の処分を提案しようと思ってもほぼ上手くいきません。
私たちの親世代は買った家に一生住み続けるという価値観の時代だったからです。
自発的に気が付かない限り、実家という幻想は簡単には覆りません。(恐らく会話にすらならないと思います)
論点を変えて、今後のメンテナンスの計画などの相談に乗ることから始めるのが良いかもしれません。
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